空き家の譲渡所得

 事例です。


 西野さんは、赤羽から徒歩15分の一軒家に一人で暮らしていました。駅から遠いところは大変だからもっと駅の近くのタワーマンションとかのほうがいいんじゃないかと娘さんは薦めていましたが、長年住んでいた荒川が眺める高台から離れられずのままでした。

 ある夜、晩御飯を近所の囲碁友達と食べて家に帰りましたところ、急におなかが痛くなりまして翌早朝に亡くなってしまいました。

 さて、この家ですが、結構広いので時価が1億円くらいあります(昭和の早いころから所有しているので簿価は不明)。税理士の私のところに持ち込まれたときにはすでに遺産分割も終わっており代表の娘さんが取得し不動産会社が主導で売却引き渡し済みでした。売却をするのであれば、譲渡所得の特例の適用を考えるのですが、通常の居住用の3000万円控除については、相続人がその家に住んでいませんので適用できません。ですので、生前に高台よりもマネーが大事だと言って西野さんに赤羽駅近くのタワーマンションに引っ越しを強引にすすめたほうがよかったかもしれません。

 また、空き家の譲渡所得の特例というのがあります。これは、昭和56年5月31日以前に建築された建物を耐震補強をして売るか、それとも取り壊して売却しないといけません。

 よく買手が取壊費用を負担して売却するケースがありますが、ラッキーと思ったのは束の間。相続人が共有で取得して、例えば3人が取得して取り壊して要件を満たして売却すれば、税負担が3000万円×20%×3=1800万円違ってくる可能性もあったのです。今回のケースでは案の定、購入を急いだ買手が現状のままでの引き渡しを求めていて、買手が取り壊しに着手しておりまして手遅れでございました。


 なお、相続税の小規模宅地の特例の絡みもありますので、実際はさらに複雑ですが。


さくら坂税理士法人(旧:河野太一税理士事務所)

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