一番基本的でありながら
非常に悩むところであるのが、売上と収益の帰属時期の問題です。
税務調査等でも一番よく見られるところです。
その収益に対応する売上原価については損金に算入します。
当たり前じゃないかというところですが、
実際には、納品が終わっていたり、
作業が終わっていたりするものの請求書が出されていないもの、
金額が確定していなかったりするものがあります。
また、その売上を得るためにぜったいに必要な作業が残っていたりするもの
があったりします。
第59回税理士試験より
宅地開発業を営むA社は、X県Y市内の土地を購入して造成し、宅地として販売することにした。
A社は、この宅地開発行為についてX県知事の許可を受けるため、
都市計画法に基づきY市と協議を行ったところ、Y市から、
開発区域外にある雨水排水路の改修工事を行うよう行政指導を受け、
これに従わない場合には同法に基づく同意《参考1の法令参照》を与えないとの方針が示された。
そこで、A社はこれを了承し、Y市の同意を得てX県知事の開発許可を受けた上で、
宅地の造成を行い、
平成21年12月にこれを販売してその収益を当期(自平成21年4月1日至平成22年3月31日)の
益金の額に算入した。
また、雨水排水路の改修土事については、当該工事を請け負わせる予定の土木建築会社から
工事費の見積額を1億円とする見積書を受け取り、
平成22年1月に同社との間で請負契約を締結したが、その後、
当該工事による環境悪化を懸念する住民の反対運動が起こったため、
当期末現在、当該工事は施工されていない。 .
以上の事実関係の下、A社において、
雨水排水路の改修工事に要する費用の見積額1億円は当期の損金の額に算入されるか。
理由を付して簡潔に説明しなさい。
◎ 都市計画法第32条第1項
(公共施設の管理者の同意等) 開発許可を申請しようとする者は、
あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならない。
法人税法22条3項では、各事業年度の損金となるものを規定している。
1号は売上原価
2号は販売費及び一般管理費
3号はその他損失
2号のカッコ書きで、その事業年度において債務の確定していないものを除く、としているので、
債務未確定のもの、つまり相手方から確定額が記載された請求書を事業年度末において収受
できないものは費用にできない、として実務上横着をしている税の実務家はたくさんいる。
しかし、売上に対応するものとして個別に原価を計算するときには、
1号には債務の確定していないものが除かれていないので、合理的に見積もって損金に算入する
ことができるということである。
しかし、アフターフォローだとか想定される不具合の後処理といった事後的に発生するような
費用は売上との個別対応があってももちろん翌年度以降の損金である。
1億円といったら非常に大きい金額でこれを損金にできるかできないかは
非常に悩ましいですが、
見積原価として当期の売上に対応させないと、
当期の期間損益が大きく狂ってしまいます。
この結果に基づいて作成された財務諸表を信頼した取引先等や関係者は困ります。
あと、会計上は原価として税務申告書だけ加算をするような事なかれ主義的な
士業の方も結構いますので気をつけてください。
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